【彫金】アクセサリーの作り方!アメシストピアス編【制作工程】

彫金 アクセサリー 作り方 ロストワックス アメシスト ピアス 鏡面仕上げ製作工程
どうもちょっぴり職人Qlipです。
今回は宝石の原石を使ってピアスを作っていきます。

宝石の原石は生成される環境によって様々な姿をしています。
人の手が加わっていないからこそ、宝石本来の美しさがあるんです。

アクセサリーの作り方はいくつか方法がありますが、ロストワックス鋳造での製作となります。
今回も不定形の素材と相性の良いソフトワックスを使用して、ピアスを製作していく行程を紹介していきます。

アクセサリーの作り方の作業工程

  1. 素材となる宝石を観察し、魅力を見極める
  2. ソフトワックスを使用して原型を製作、鋳造出し
  3. アクセサリーに仕上げていく
  4. 洗浄して完成

素材の形状を見極める

今回使用する宝石はアメシストなのですが、通常販売されている研磨された宝石ではなく、結晶が集合した状態のモノを使用します。
このように結晶化した状態のアメシストを『ドゥルージー・アメシスト』と呼ぶこともあります。
素材の表情を観察し、魅力ある部分を見極める

キラキラと輝く結晶を最大限に生かせるアクセサリーになるようデザインを練り上げていきます。

この宝石は一定方向に結晶化した部分を切り出しているのであまり悩むことはありません。

今回使用したアメシストという宝石についてはこちらの記事で紹介しています。

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アクセサリーとなる原型を作り、鋳造へ

宝石に触れながら練り上げたデザインの方向性に従いつつ原型の製作をしていきます。
今回もソフトワックスを使用してアクセサリーを製作していきましょう。

大まかな作業工程

  1. 宝石を設置する台座を組み上げ
  2. ピアスポストを設置する場所決め
  3. 原型完成、鋳造へ出す

原型製作に使用する素材と工具についてはこちらの記事で紹介しています。

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宝石を設置できるように台座を組み上げる


宝石の形状を確認しながら綺麗に収まるように固定するよう土台を組み上げます。
宝石を固定する台座のことを「石座」と呼び、基本的に2点以上の爪(宝石を台座から外れないようにする部分)を作り、宝石自体が枠から外れないように形を組み上げます。

爪を作る際は石を尊重し目立たないようにする場合や、逆に装飾を施してデザインを際立たせるなど様々な工夫を凝らすことができます。
今回はアメシストの結晶を強調するため、結晶に隠れるようなシンプルな爪にしていきます。

ピアスのポストを設置する場所を決める


今回制作するアクセサリーはピアスになるので、耳に差し込む為の棒部分が必要になります。
耳に差し込む棒の部分をピアス「ポスト」と呼びます。
ロストワックス鋳造でピアスを作る場合にはアクセサリーの土台を製作し、鋳造されたパーツに市販されているポストを溶接する方法が基本です。

原型にポストを作らない理由は、鋳造することで金属の密度が下がるため強度が低下してしまうからです。
強度が低下することで破損などのトラブルを避けるために、鋳造したパーツに既製品のポストを溶接することが良いとされています。
例外として、ピアスの形状によってはポストも含めた形状で鋳造することもあります。

ポストを溶接する際に接地面が多いほど強度が得られるためポストを差し込める部分を作ります。

この部分を作ることによって、ポストを溶接する際にポストを固定すつことが容易になるため必ず作成しましょう。

原型完成、鋳造へ出す


イメージした形になれば原型の完成です。

宝石を外して鋳造に出します。

ハードワックスを使用したアクセサリーの作り方はこちらの記事で紹介しています。

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アクセサリーに仕上げていく

鋳造から帰ってきたピアスを仕上げしていきましょう。
今回は爪に光沢を持たせるように磨いていきます。

大まかな作業工程

  1. 湯口取り、下磨き
  2. ピアスポストの溶接
  3. バレル研磨、石座の確認
  4. 仕上げ磨き
  5. 石留め

使用する工具


① ニッパー
湯口を切断するために使用。
大雑把に切断されるので多少余白を残して湯口を切除するように気をつける。
② リュータポイント
今回使用したポイントを上から紹介します。
・ダイヤモンドポイント
ニッパーで切断した湯口を大まかに削り取る。
・たんぽぽ(ミエットバフ)
左から粗 → 中 → 細の荒らし仕上げになる。
・豆バフ(ピンク, 白)
最終仕上げに使用。
・紙バフ
ピンポイントに仕上げをする際に使用。
③ 研磨剤
青い研磨剤が「テリーナ」。
緑の研磨剤が「Pピカ」。
④ ヤットコ
今回は宝石を留める爪を倒すために使用しました。
⑤ バーナー
金属を熱することで溶接する際に使用します。
今回はカートリッチ式の物を使用していますが、本格的に彫金の加工をする際はブローパイプを購入,設置することをオススメします。
⑥ フラックス
酸化防止剤:火を当てた際に金属の表面が酸化することを防ぐための薬剤。
⑦ ロー材
溶接する際に使用する溶剤。
今回使用するのは銀なので「銀ロー」を使用。
銀ローには「2分→3分→5分→7分→早ロウ」と種類に分かれ、数字が若いほど融点が高くなる。
⑧ 耐熱ロー付け台 耐火煉瓦
火を使った加工をする際に使用する作業台。
⑨ ピンセット
熱したり、薬品に漬けたアクセサリーを持ち上げるために必要になります。
⑩ 希硫酸
酸洗するために使用する希釈された硫酸。
金属表面に付いた酸化防止剤を落とすために使用します。

湯口を取り下磨きをする


湯口をニッパーで大まかに切り落とす。
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ダイヤモンドポイントで形を合わせる。
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ミゼットバフ(たんぽぽ)を使い全体を研磨していく。
荒さを徐々に細くしていくことで表面をならし違和感をなくす。

ピカピカになる鏡面仕上げをする際にはこちらの記事で詳しい行程を紹介しています。

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ピアスポストの溶接

アクセサリーの土台となる部分が仕上がったので、ピアスのポストとなるパーツを溶接します。

金属を溶接することを職人は『ロー付け』と呼びます。


バーナーを使うので、火床にパーツとポストを設置する。
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フラックスをロー付けする場所に塗る。
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銀ロウを設置する。
今回は5分ロウを使用しました。
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バーナーで炙り銀ロウが溶けるまで熱する。
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しっかりと銀ロウが馴染めば溶接完了。
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希硫酸に入れフラックスを溶かす。
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水洗いをしつつ重曹で酸を中和する。

加熱しすぎるとパーツが溶けてしまうことがあるので、ロー付けをする際には火の当てすぎに注意する必要があります。

バレル研磨、石座の確認

全体の雰囲気を合わせるためにバレル研磨します。

この段階でバレルに入れることで、溶接した際に焼きなましされた状態の地金を締める意味合いもあります。

バレル研磨
バレルという専用の機械を使用します。
研磨対象を水と金属チップを入れた容器に入れ、その下に磁石と回転盤を取り付けた構造の機械が磁気バレルです。
回転盤が動作することで容器内の金属チップが回転運動し、研磨対象にぶつかることで徐々に表面を研磨することができます。

焼きなまし
加工によって地金の密度が高くなり、加工が難しく感じた際に金属組織をほぐすために火を当てる加工。
地金が赤みを帯びるまで熱した後、水に入れ冷却することで焼きなましされます。

本格的に磨いていく前に、宝石がちゃんと石座に収まるのかを確認しましょう。

この時に宝石と爪の状態を適度に合わせておくと石留めの際に楽になります。

仕上げ磨き


豆バフ(ピンク)とテリーナ。
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豆バフ(白)とPピカ。

ソフトワックスで制作した原型は粗い研磨剤で磨いてしまうと形が崩れてしまうのため、最終仕上げ用の研磨剤を使い光沢を出していきます。

宝石を留める

土台が完成したので、いよいよ宝石を留めていきます。

石座に宝石を置く。
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ヤットコを使用して宝石を爪で留める。
この時、4本の爪を均等に少しずつ倒していく。
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宝石の位置を確認しながらしっかりと固定する。
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ヤットコで挟んだ際に着いた傷を磨く。
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石留め完了。

石留めの際に全ての爪を少しずつ倒すのは、一箇所に負荷がかかってしまうと宝石がズレてしまったり欠損の原因となるため、全体を慎重に固定していくと綺麗に石留めができます。

アメシストピアス完成


磨き作業の際に付いた研磨剤を洗浄します。
最後にピアスキャッチを装着させてアメシストピアスの完成です。

宝石の原石は様々な形をしているため、アクセサリーに加工するには少し工夫が必要になります。
複雑な形に合わせるように加工ができるソフトワックッスは、原石を使用したアクセサリーの製作に適した素材です。

制作を終えて

今回使用したアメシストは鉱石標本として販売されていたモノです。
棚に飾り鑑賞するのもいいですが、身につけられるようにできたらと思い製作しました。
普段目にすることのできないようなアクセサリーをこれからも作り続けていきます。

鉱石標本をアクセサリーに作り変える方法から彫金に興味を持って頂ければ幸いです。

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