【彫金】シルバーアクセサリーをお手入れする5つの方法【知識編】

知識編
Qlip
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どうもちょっぴり職人Qlipです。
皆さんが普段使っているアクセサリーのお手入れはしていますか?
放っておくと黒くなってしまったり、小さい傷がつくことで本来の光沢を失ってしまいます。
経年変化を楽しむこともありますが、お手入れをすることで美しさを取り戻せるといいですよね。

今回は身近なアクセサリーであるSilver(シルバー)アクセサリーのお手入れを紹介します。
家庭で準備できるものからホームセンターなどで手に入る専用の道具の紹介や、お手入れできるモノとできないモノまでお話しさせていただきます。

Silver(シルバー)のお手入れする前に

Silver(シルバー)が黒ずむ原因は「硫化」という化学反応が起きているからです。
硫黄系の温泉に装着したまま入浴をすると黒く変色したことはありませんか?
空気中の微量な硫化水素や、汗や皮脂の付着によっても影響を受けます。

そんな黒ずんでしまったアクセサリーをお手入れしていきましょう。
今回は手間と仕上がりで4段階に分けてお話ししていきます。

紹介するお手入れの方法はいずれもメッキ加工を施されたものには効果は無く、表面の損傷に繋がりますので行わないようにお願いします。

身近なものでお手入れ

・塩とアルミホイル

用意するものは塩,アルミホイル,鍋,水です。

鍋にアルミホイルを敷きそこにアクセサリーを置き、そこにアクセサリーが沈む量の水を注ぎ、水5:塩1程度の分量の塩水で煮込みます。
ある程度綺麗になったら水洗いして完了です。

アルミホイルには銀と化学反応した硫黄と結合することで、銀から硫黄を引き剥がす効果があるようです。

天然石のついたアクセサリーや黒ずみを部分的に残したいアクセサリーへのお手入れは避けてください。

・重曹とアルミホイル

塩を使った方法よりも効果の高いお手入れのしかたになります。
用意するものは重曹,アルミホイル,耐熱容器,熱湯です。

耐熱容器にアルミホイルを敷き、アクセサリーと重曹を入れ熱湯を注ぎます。
泡立ってくるので落ち着くまで待ちましょう。
泡立ちが落ち着いたら水洗いをして完了です。

重曹はアルミホイルと銀が化学反応した硫黄との結合を助ける役割があるそうです。

こちらも天然石のついたアクセサリーや黒ずみを部分的に残したいアクセサリーへのお手入れは避けてください。

また重曹は粒子が細かいため、アクセサリーを水で濡らした状態で指で擦り付けることでもある程度表面を研磨することができます。
それなりの光沢感を取り戻すことができますので試してみてください。

手軽にお手入れ

・シルバークロス

シルバー専用のクロスは微細な研磨剤の含まれた布を使い、乾拭きすることで表面を研磨します。

クロスで拭うように研磨するため、凹凸のあるデザインであればあえて黒い部分を残すように研磨することや、宝石やパールなどの金属以外の部分を避けてお手入れをすることもできるので、必要に応じた自分の塩梅でのお手入れができます。

注意しなくてはいけないのは、新品の商品や表面を荒らし加工している製品には使用できません。
新品の商品はシルバークロスの研磨剤よりも微細な研磨剤で仕上げていることが多いため、シルバークロスによって傷がついてしまう可能性があります。
荒らし加工(ヘアライン,サテン,梨地,白仕上げ)のようなマットなテクスチャーの仕上げの製品には表面を研磨してしまうことで、製品の雰囲気を損なってしまいます。

手軽にお手入れが可能な半面、製品の状態によって制約のあるお手入れの方法になります。
100均ショップやホームセンターなどでも購入ができるので気軽にお手入れが可能です。

・液体クリーナー

アクセサリー用の液体クリーナーは、クエン酸を使った弱目のものから硫酸を使った強めのものがあり、いずれも酸によって銀の表面を溶かして研磨します。
使用後は丁寧に水で洗い流し水気を拭き取るようにしてください。

液体状のためクロスでは届かない部分も研磨する事ができる上に、液体に浸けるだけなので非常にお手軽です。

チェーンや細かなデザインや細工を施された製品、ヘアライン,サテン,梨地などの荒らし加工の製品のような手作業では対応できない箇所のお手入れに有効です。

注意しなくてはいけないのは、液体に接触した部分は研磨されてしまうので、黒い部分を残すことができません。同様に白仕上げの製品にも使用することはオススメできません。
パールやエメラルドなどの高度の高くない輝石や、あまり有名でない宝石などもどのような反応が起こるのか分からないので控えるべきです。
ステンレス製品は酸と反応することで変色してしまうので使用しないでください。
ホームセンターなどで購入することができるのでこちらも気軽にお手入れすることが可能です。

・超音波洗浄機

超音波の振動によって気泡を発生させ、気泡が弾けることによって細かな部分の洗浄が可能になります。

中性洗剤を加えることによって効果を高めることが可能です。

注意しなくてはいけないのは、振動を与えるために宝石によっては破損する可能性もあるので長時間の使用は控えることをオススメします。
振動により宝石の留めが緩んでいる場合などに取れてしまう可能性もありますので注意が必要となります。

水や中性洗剤を使用した場合に皮脂や汚れなどを落とすことは可能ですが、黒ずみを落とす効果はないので、アクセサリーが清潔になることが主な効果となります。

ホームセンターなどで販売されているメガネの洗浄に使える超音波洗浄機で対応可能です。
一般家庭で使用するものとは別に、専門の工具としての超音波洗浄機もあります。

我々職人は超音波洗浄機の水面に先述した液体クリーナーを浮かべて使用することで、より研磨の効果を高めるために使用したりもしています。

専用の道具を使ってお手入れ

・シルバーポリッシュ

ペースト状の研磨剤になります。
シルバークロスよりも細かい研磨剤が使用されていつのでより光沢感のある仕上がりになります。
シルバーアクセサリーの中にはシルバーポリッシュで最終仕上げをしている製品も多くあります。

使用方法は、少量をティッシュや布の端切れに取り、クロスと同じように磨きたい部分を研磨するように拭っていきます。
シルバーポリッシュ自体が研磨剤を油分で溶いたモノになるので、使用後はお湯でしっかりと洗い流してください。

注意しなくてはいけないのは、表面を荒らし仕上げの加工をしている製品やパールや高度の低い天然石の部分には使用できません。
荒らし加工(ヘアライン,サテン,梨地,白仕上げ)のようなマットなテクスチャーの仕上げの製品には表面を研磨してしまうことで、製品の雰囲気を損なってしまいます。
パールや高度の低い自然石はシルバーポリッシュの研磨剤により、表面に微細な傷をつけてしまうことで光沢を失ってしまう可能性があります。

表面を研磨していくので多少時間はかかりますが、浅い傷なども取ることが可能なので仕上がりとしては製品を元の状態に近づけることのできるお手入れの方法になります。

ホームセンターや彫金工具の専門店などで購入することが可能です。

新品同様に戻すには

・専門工具と研磨剤

お手入れというよりはお直しに近くなります。
専門の業者さんや職人、購入した製品のブランドさんや作家さんがおこなうお手入れになります。

基本的にはリューターと呼ばれる電動工具にアタッチメントを装着して、アクセサリーを研磨していきます。
リューターは歯医者さんが歯を削るときに使うドリルのような工具を小さくした道具を使います。

シルバーポリッシュよりもさらに細かい研磨剤を使用することで、シルバー本来の輝きを取り戻すことが可能です。
また、荒らし加工(ヘアライン,サテン,梨地)のようなマットなテクスチャーの仕上げの製品も専用のアタッチメントを使用すつことである程度復元ができます。
白仕上げは研磨とは違う方法での仕上げになるのですが、宝石のなどが付いていないものであれば復元が可能です。

知識と経験が必要にはなってくるのですが、お手入れとしては最高の仕上がりになります。
気になる方はアクセサリーのクリーニングやリペア、リメイクなどを請け負ってくれるお店もありますので必要に応じて相談してみることをオススメします。

Silver(シルバー)を黒くする方法

前述したようにSilver(シルバー)の金属特性として、硫黄と反応することで黒くなります。
この反応を「硫化」といい、彫金用語としては「燻す」と言います。
この黒くなる特性を活かすことでアクセサリーの凹凸を際立たせ、立体感のあるデザインにすることができます。

黒く燻すためには専用の薬液を使用します。
ホームセンターや彫金工具の専門店などで販売しており、「銀黒」「黒化液」「ムトウハップ」を使います。

・Silver(シルバー)の燻し方

・銀黒,黒化液を使って燻す

薬液に接触した部分が黒く燻されるので、そのまま漬けると全体が黒く燻されます。
部分的に燻す場合は筆や綿棒に浸し、燻したい場所に塗りましょう。
薬液が残っていると変色し続けてしまうのでしっかりと洗い流してください。

余分に黒く変色してしまった部分を、シルバークロスなどで研磨することでメリハリのある状態にすることができます。
また、思ったような変化が得られなかった場合は液体クリーナーにつけることでリセットすることもできます。

・ムトウハップを使って燻す

現在では入手が困難な薬液になりますが、銀を燻すにはとても面白いモノになります。

使用方法は熱湯に数滴垂らして使用します。
重曹で表面を脱脂。
沸騰した薬液にアクセサリーを沈め、黒く変色した段階で引き上げる。
重曹で表面をこすり弱く変色した部分を落とす。
ムトウハップの液に漬ける。
これを繰り返すことで光沢のあるシルバーアクセサリーに仕上げることができます。
余分に黒く変色した部分をシルバークロスなどで研磨し仕上がりを整えましょう。

ムトウハップは徐々に硫化していくので低温に保った薬液に沈めることで、青や赤の色を出すこともできます。
銀の変色は止めることはできないので最終的には黒くなってしまいますが、色や風合いを楽しむことができます。

・塩素系の漂白剤を使わない

塩素系の漂白剤で変色を促す方法を紹介していることはありますが、職人は使用しません。
これは形成される変色の皮膜が強く、その後硫化反応することがなくなるためです。

まとめ

どうでしょうか、お手持ちのアクセサリーのお手入れをしてみませんか?
さまざまなお手入れをすることでお手持ちのアクセサリーの見た目を整えることができます。

購入した時から共に歩んできたアクセサリーのお手入れをしてあげることをお勧めします。
美しい光沢のあるSilver(シルバー)を保つことも一つのおしゃれかもしれません。
手をかけてお手入れをすることで愛着の湧く素敵なアクセサリーとのお付き合いをしていただければと思います。

金やプラチナよりも美しい半面お手入れに手間もかかりますが、経年変化も楽しめる魅力ある貴金属であることに気がついてもらえれば幸いです。

長文にお付き合い頂きありがとうございました。
またの機会にお会いできることを願っております。

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