【彫金】指輪のロストワックスを使った作り方【制作工程】

ロストワックス 指輪 リング 作り方 原型製作技法・技術編
Qlip
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どうもちょっぴり職人Qlipです。
今回は実際にリングを作る過程の流れをお話します。

アクセサリーやジュエリーはどのように作られているかご存知でしょうか?
作り方としては主に3通りに分けられます。

  1. 古来り受け継がれてきた金属そのものを加工して作り出す方法。
  2. ワックスという素材を加工し、その後鋳造という工程から金属に置き換える方法。
  3. 銀粘土を用いた銀を含んだ粘土細工を焼成する方法。

一般的なアクセサリーやジュエリーは2つ目のロストワックス鋳造によって作られています。
この方法の優れているところは金属よりも加工が容易な素材を用いることによって、柔軟な形状と繊細な表現を実現することが可能なことから、デザイン性の高いアクセサリーやジュエリーを作り出すことが可能になるところです。
今回はロストワックス鋳造に使用する原型となるリングを作る工程を紹介しようと思います。

ロストワックス鋳造とは


ワックス(ロウソクのロウのような素材)で作られた原型を石膏に埋没させ、加熱しロウを溶かし出すことで石膏の中に原型と同じ形の空洞を作り出し、そこに金属を流し込むことで原型と同じ形状の金属を取り出すことを鋳造と呼びます。
金,銀,プラチナに真鍮などアクセサリーに使われる金属のほとんどを鋳造することができます。

Qlip
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アクセサリーを制作する人は「鋳造」することを英語呼びで「Cast(キャスト)」と言います。


ロストワックス鋳造に用いられる素材はワックス(WAX)と呼ばれるロウソクのロウを固めたような素材になります。
ワックスは大きく2種類に分けられ、硬くヤスリなどで整形する『ハードワックス』と、手で曲げ伸ばしができるほど柔らかい『ソフトワックス』があります。
今回は『ハードワックス』のチューブというリングを作る際によく用いられる筒状に整形されたワックスを使用しました。
ワックスには他にもブロックやスライスと呼ばれる形状のモノが販売されています。
ハードワックスには硬さが3段階あり、青(柔らかい)→ 紫(青と緑の中間)→ 緑(硬い)に分けられ、制作する人との相性によって使用するワックスが変わります。

Qlip
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私はハードワックスよりもソフトワックスを好んで使用するため、ハードワックスとはそこまで仲が良くなかったりします。。。(汗)

指輪の仕上げ作業工程

  1. 素材の切り出し
  2. リングのサイズ出し
  3. 外形デザインの整形
  4. 指馴染みの整形
  5. 仕上げ

彫金で仕上げに使用する工具の紹介

Qlip
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画像の右側から紹介していきます。

– 糸鋸(イトノコ)
使用するノコ刃によて金属やワックスなど様々なものを切断することができる彫金の必須道具。
様々な刃を付け替えることで状況に合わせた加工をすることができる。
今回はワックス用のノコ刃を使用します。

– サイズ棒
指輪のザイズを確認する道具。
真円の指輪のサイズを計測するためのモノなので、変形の指輪のサイズを測る場合はあくまでも目安程度に使用する。

– リーマー
ワックスの内側を同心円状に効率的に切削し拡張する工具。
適度な力加減と角度で使用する必要があり、簡単な作業に見えるが以外と使いこなすのが難しい。
筆者も使いこなせるようになるのに少し時間が必要でした。

– スコヤ
L字の工具で直角を計測する計測機器。
精度が求められる作業において重宝します。

– ノギス
1/10ミリまで計測することができる定規のようなもの。
彫金をする際の必須道具。
印を付けることにも使用できるが歪みが生じてしまうため、計測用と加工用を使い分けすることでより精度の高い作業が可能になります。

– 鑢(ヤスリ)
物質の表面を削る工具。
今回はワックス切削用の「ゴムヤスリ」と金属の切削にも使える「中目の腹丸ヤスリ」を使用しました。
ヤスリは用途に応じて多様な形状とヤスリ目の粗さがあります。
粗目は「鬼目」→「中目」→「細目」のように分類される。
鬼目は主に木工用で彫金では中目以下を使用します。

– キサゲ
金属などの表面を削り整えるための刃物。
金属などの表面を薄くそぎ取るための工具であり、市販されているものは研ぎ直して使用することをお勧めします。
筆者の好きな工具で使用する状況に合わせた形状のモノを複数種類自作しています。

– すり板
彫金において最も基礎的で必須となる道具。
作業台として使用するため、作業する人によって形状や仕様が変化する。
状況や作業工程によって形状を加工するため消耗品の側面もある。
これがないと始まらないというほど重要で基礎的な工具。

制作工程

素材の切り出し

  • チューブワックスから必要な大きさをノギスを使い目印を付ける。

回転させながら切ることでブレることなく切断することができます。

  • 切断面をゴムヤスリで整え、断面が水平になっているかをスコヤで確認する。

リングのサイズ出し


今回のサイズ目標は15号なので、規定のサイズまでリーマーで拡げていきます。

力ずくで工具を使用すると穴が不定形になったり、歪んだりするので力を加えすぎず慎重に作業する必要があります。

外形の整形

  1. リングの厚みを決め、ノギスを使い両側に印を付ける。
  2. 余分な部分を糸ノコで切り落とす。
  3. ゴムヤスリで円柱状になるように削っていく。

ヤスリをかける際にリングの曲面に添うようにヤスリを動かすと面が綺麗に出しやすくなります。


筒状のリングができました。

Qlip
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このままでは指を曲げる際に下側が当たるためつけ心地が悪いです。


邪魔にならないように指の腹にくる部分に向かって斜めに削り落していきます。

  1. ノギスで削る部分の目安に印をつける。
  2. ゴムヤスリを使い削り落していく。
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なんとなく指輪っぽくなってきました。


外周に向かい反ったデザインにしようと思うので、中心から外側に向かうように削っていきます。

  1. ゴムヤスリの丸くなっている側を使い削り落していく。
  2. 真ん中が薄くなりすぎないように気をつけながら削り落とす。

ワックスを光に透かすことで色味が変化するので、厚みの均一具合やバランスを確認することができます。

ここまでくれば指輪としての外形はほぼ完成です。

指馴染みの整形

指馴染みとは
リング内側のヘリの部分。
リングと指が接触する部分で、この部分が指輪の付け心地を左右します。


加工前のリング内側のヘリは角が立っている状態です。
このままだと指輪をはめる際、指に当たるため付け心地が悪くなります。

  1. キサゲを使って角を落とし滑らかになるようにそぎ落としていく。
  2. 外形にうまくつながるように整形する。
Qlip
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ヤスリで削ってもいいのですが、筆者としてはキサゲの方が綺麗に整えられると思っています。

指輪の仕上げ


整形したワックスの表面にはヤスリで削った跡や傷が残っています。
鋳造するとヤスリの跡や傷がそのままついた状態で金属になってしまうので、ある程度傷のない状態に仕上げる必要があります。

  1. ゴムヤスリよりも目の細かいヤスリで削り跡を削る。
  2. キサゲなどの表面を薄くそぎ取る工具で表面をならす。
  3. ワックスフィニッシュという薬剤や、ストッキングなどで表面を磨く。

3番目まで仕上げると素材自体が光沢を放つほど綺麗に仕上がりますが、鋳造すると金属表面がザラついてしまうためあまり意味はありません。
金属になってからの仕上げ工程で全面削ってしまうことも多く、ある程度目立つ傷がない程度に仕上げる程度でワックスの加工は終わらせても問題ないです。

仕上げが終わればワックスリングの原型製作の完了です!!

完成したリングを鋳造してくれる業者さんにお願いして金属にしてもらいましょう。

金属になった指輪の磨き方はこちらの記事で紹介しています。

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まとめ

ハードワックスを使ったリングの製作について解説してきましたが、筆者自身も普段あまり気にせずに行っていた作業に向き合うことができてとても新鮮でした。
今回紹介した方法に加えてより細かく彫刻を施すなどして作られたものが、一般に流通しているアクセサリーの原型となっています。
作り方を知ることで、製作の難しさや細工の巧妙さに気づくことができるかもしれません。
以外と身近に素材を手に入れることも可能ですので、一度チャレンジしてみるのはいかがでしょうか?

その他のアクセサリーの作り方についてはこちらの記事で紹介しています。

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普段触れているアクセサリーやジュエリーがどのようにして作られているのかに触れることで、少しでも彫金を身近に感じて頂ければ幸いです。

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