【彫金】アクセサリーの作り方!パイライトの指輪編【制作工程】

彫金 アクセサリー 作り方 ロストワックス 指輪 リング パイライト 白仕上げ技法・技術編
どうもちょっぴり職人Qlipです。
今回は形の定まっていない宝石の原石を使って指輪を作っていきます。

宝石の原石は加工されていないがゆえの唯一無二の美しさがあります。
加工されていないからこその美しさではあるのですが、不定形であるがゆえにアクセサリーに加工することが難しくもあります
しかし、それを比較的手軽に解消しアクセサリーを制作する方法を今回は紹介しようと思います

アクセサリーの作り方はいくつかありますが、今回はソフトワックスを使って指輪を作ります
ロストワックス鋳造はアクセサリーを作る際に用いる技法としては最もポピュラーな技法です。
今回は柔らかく柔軟で変形させやすい反面、加工する際に癖のあるソフトワックスを使って指輪を製作する工程をご紹介しょうと思います。

アクセサリーの作り方の作業工程

  1. 素材となる宝石を観察し、魅力の見極め
  2. ソフトワックスを使用して原型を製作
  3. 鋳造
  4. 下磨き、石座の確認、SILVER刻印の打刻
  5. 白仕上げ
  6. 石留め
  7. 洗浄して完成

素材の表情を見極める

今回使用するパイライトも様々な角度から観察することで多くの魅力を感じさせてくれる宝石の原石です。
様々な視点から観察することで自分の伝えたいと感じる部分の魅力を探っていきます。

素材の表情を観察し、魅力ある部分を見極める

宝石の原石は角度によって様々な表情を持っています。
身につけた時にどの部分が見えた時にドキドキするのかを考えながら色々な角度から原石を観察してみましょう。


製作の方針を決めてデザインを頭の中で練り上げていきます。
今回使用するパイライトには部分的に不自然に溶解した部分があり、色が変わっている箇所が気になったので、そこを魅せられるようにしようと思います。

今回使用したパイライトという宝石についてはこちらの記事で紹介しています。

『黄鉄鉱・パイライト』【宝石】ちょっと不思議な鉱物
不思議な鉱物パイライトについて少し深掘りしたことを書き留めていきます。 黄鉄鉱(パイライト)とは 和名「黄鉄鉱」、英名「Pyrite(パイライト)」 鉄と硫黄で構成される硫化鉱物 淡黄色の真鍮色で金属光沢を持つ鉱物 「Pyr...

アクセサリーの原型を作る

デザインの方向性を決めたところで、製作に移っていきましょう。
今回はソフトワックスを使用してアクセサリーを作っていきます。

原型製作に使用する素材と工具についてはこちらの記事で紹介しています。

彫金工具解説!ソフトワックスの原型製作版【工具編】
アクセサリーの製作の方法の1つのロストワックス鋳造法につてお話しします。 ロストワックス鋳造の原型製作には素材となるワックスを使用しますが、「ハードワックス」と「ソフトワックス」の2種類があります。 今回は「ソフトワックス」で原型を製作...

土台を組み立て宝石を固定できるようにする


宝石の形を尊重しながら固定できるように土台を作り上げていきましょう。
宝石を固定する台座のことを「石座」と呼び、基本的に2点以上の爪(宝石を外側から抑えるための部分)を作り、宝石自体が枠から外れないように形を組み上げます。

爪を作る際は石を尊重し目立たないようにする場合や、逆に装飾を施してデザインを際立たせるなど様々な工夫を凝らすことができます。
今回はパイライトの結晶の雰囲気を感じたいのでシンプルな爪にしていきます。

宝石の場所と見え方を決める


指輪にした際にどのように見えるのかを実際に指に乗せて考えます。

指の間にパイライトが置いてあるように見える左から3枚目のが気に入ったので、その場所に収まるように指輪にしていきます。

指輪になるように加工していく


サイズ棒にワックスを巻きつけ目指しているサイズを出す。
⬇︎
作ったリングを石座と組み合わせて指輪としての形を作る。
⬇︎
完成した指輪のイメージに必要のない部分を取り除く。

デザインのイメージは、指の間にパイライトが浮いて見えるようにするため指輪となる部分を大幅に削りました

装飾しながら形を整える


線だけだと寂しいので装飾を施しながら形を整えていきます。
適度に指に装着し、着けた時のバランスや着け心地を確認しましょう。

原型完成


納得できる形になれば完成です。

宝石を外して鋳造に出します。

ハードワックスを使用したアクセサリーの作り方はこちらの記事で紹介しています。

【彫金】指輪のロストワックスを使った作り方【制作工程】
アクセサリーやジュエリーはどのように作られているかご存知でしょうか? 作り方としては主に3通りに分けられます。 古来り受け継がれてきた金属そのものを加工して作り出す方法。 ワックスという素材を加工し、その後鋳造という工程から...

アクセサリーに仕上げていく

鋳造から帰ってきた指輪を仕上げしていきます。
今回は表面を荒らし加工を施し、白仕上げにしていこうと思います。

使用する工具


① 糸鋸(糸ノコ)
今回は太い湯口が付いていたので、金属切削用のノコ刃を装着して使用します。
② おたふく槌
SILVER刻印を打つために使用する工具。
③ SIRVER刻印
シルバーの品質証明をするための刻印。
④ リューターポイント
今回もリュターを使用します。
使用したポイントは右から切削用の超硬ポイント、ダイヤモンドポイント、ミゼットバフ(たんぽぽ)です。
⑤ ヤットコ
今回は宝石を留める爪を倒すために使用しました。
⑥ 希硫酸
酸洗するために使用する希釈された硫酸。
金属表面に付いた酸化防止剤を落とすために使用します。
⑦ ボンプロ
酸化防止剤:火を当てた際に金属の表面が酸化することを防ぐための薬剤。
⑧ ピンセット
熱したり、薬品に漬けたアクセサリーを持ち上げるために必要になります。
⑨ 耐熱ロー付け台 耐火煉瓦
火を使った加工をする際に使用する作業台。
⑩ バーナー
金属を熱することで溶接する際に使用します。
今回はカートリッチ式の物を使用していますが、本格的に彫金の加工をする際はブローパイプを購入,設置することをオススメします。

湯口を取り下磨き


大きな湯口を糸ノコで切り落とす。
⬇︎
切削用の超硬ポイントを使用して大まかに削るとる。
⬇︎
ダイアモンドポイントを使い形を合わせていく。
大きい湯口の他に小さい湯口が2つあるので一緒に削る。
⬇︎
ミゼットバフ(たんぽぽ)を使い全体を荒らし仕上げにし、全体の雰囲気を合わせていく。

ピカピカになる鏡面仕上げをする際にはこちらの記事で詳しい行程を紹介しています。

【彫金】銀の指輪を鏡面仕上げにする5の手順【制作工程】
アクセサリーやジュエリーがピカピカに輝いているのは、仕上げという作業をすることにより金属の表面を磨き上げているからです。 我々職人は製品を磨き上げることを『仕上げ』すると言います。 仕上げの方法は主に4通りに分けられます。 ほ...

石のすわりの確認とSILVER刻印


作った石座にちゃんと宝石が乗るのかを確認します。

宝石が石座に乗ることを「石がすわる」と言います。

宝石がしっかりと設置できつことが確認できたら、シルバーであることを証明できるようにSILVER刻印を打刻しましょう。

白仕上げ


白仕上げは少し特殊な仕上げ方になります。
磨いて光らせる仕上げとは別で、白くマッドな雰囲気になるように加工していきます。
イメージとしては鋳造をして、バレルに入れなかった状態を再現する形です。

『白仕上げの原理』
アクセサリーに使用するSILVER925とは、銀92.5%と銅7.5%で構成される合金です。
火を当てることで銅を酸化させ、希硫酸によって酸化した銅を溶かすことで、金属の表面を純銀化させることができます。
(銅は硫酸と結合することで硫酸銅となり希硫酸に溶け出していきます。)

シルバーという素材に関してはこちらの記事で解説しています。

【彫金】シルバーアクセサリーってどんなモノ?【素材編】
今回は身近なアクセサリーにも使われるSilver(シルバー)です。 白っぽかったり黒ずんでいたり、さまざまな表情のある金属ですがどのようなモノなのかごぞんじですか? そもそもSilver(シルバー)ってなに?Silver925ってなん...

白仕上げの工程


ボンプロに漬ける。
⬇︎
バーナーで炙る。
金属の表面が赤みを帯びてきたら火を当てるのを止める。
⬇︎
希硫酸に漬けることで表面を純銀化を促進。
⬇︎
重曹で硫酸を中和しながら脱脂。

これを3回ほど繰り返すことで金属表面の純銀化を促進していきます。

熱した金属を希硫酸に漬ける際に、希硫酸が蒸発します。
この時発生する気体は人体に悪影響を及ぼすので換気を十分に行い作業してください。

宝石を固定する


石を固定することを職人は「石留め」と呼びます。

原型の時に固定していた爪の部分を倒して宝石を固定していく。
⬇︎
ヤットコを使い爪の先端を抑えるようにしてはさみ込む。
⬇︎
全ての爪を徐々に倒しながら宝石の位置を調整しながら固定する。
⬇︎
ヤットコで抑えた部分をミゼットバフで周りに雰囲気を合わせる。
⬇︎
石留め完了。

石を留める際には宝石自体の硬度にもよりますが、強く爪を抑え込むとひび割れや欠けの原因となるので慎重に作業しましょう。

パイライトの指輪完成


パイライトを固定して軽く洗浄したら指輪の完成です。
実際に指にはめ、着け心地と見栄えを確認しましょう。

宝石の原石は個性的な形をしているので、アクセサリーに加工するためには少し工夫が必要です。
複雑な形に合わせるように加工ができるソフトワックッスを使用したアクセサリーは、今回のような行程で作り上げられています。

今回はイメージしていた形に落ち着いたので、満足のいくリングになりました。

制作を終えて

ソフトワックスを使用したアクセサリーを製作している人はあまり多くありません。
温度の調整や柔らかい特性に苦手意識を持つ人が多いようです。
素材の形状と特性のために同じ素材を使用しているアクセサリーとの差別化が難しく、様々な工夫が必要になります。

自分の個性を作品に落とし込めるようになるためには、作り続けることが一番の上達への秘訣だと思います。

アクセサリーやジュエリーが作られる過程に触れることで、興味を持って頂ければば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました