今回は天然の宝石ではないのですが、美しいガラスのお話です。
『ローマングラス』をご存知でしょうか?
様々な輝きを放つガラスの欠片やビーズがアクセサリーに使用されていたりします。
これらのガラスがなぜこのような美しい煌めきを放つのでしょう?
そこで『ローマングラス』について深掘りしていきます。
『ローマングラス』とは
『ローマングラス』は「ローマガラス」とも呼ばれ、名前の通りローマ帝国時代の帝国領(現在のイタリアを中心とした地中海沿岸地域)にて生産、使用されたガラス製品全般のことになります。
時期としては、紀元前27年からローマ帝国が東西に分裂する395年までの約400年の間で製造されたガラス製品のことを指します。
「ローマングラス」とガラスの歴史
古代のガラス
ガラス製品の歴史は実は極めて古く、5,000年以上前から作られていたと言われています。
古代において高熱を用いてガラスの素材となるシリカを溶かし、ガラスを制作するためには高い技術力が必要とされました。
そのため古代においてはガラスは非常に高価なものであり、一部の特権階級の人々のみが手にすることのできるモノでした。
製造方法としては、型を作り溶けたガラスを流し込む「鋳造」という技法によって土台を作り、研磨することで彫刻を施したり表面を磨き上げていきます。
ローマ帝国とガラス
紀元前1世紀頃、ローマ帝国領(現在のシリア付近)にて「吹きガラス」製法が確立されました。
この製法が確立されたことによってガラス製品の生産効率を著しく高めることになり、ローマ帝国においては日常品として扱われるようになりました。
帝国領内に留まらず、アジアにまで通じるシルクロードを渡り世界各地へと広がって行きます。
その影響もあり、中東などの同時代の遺跡からもローマングラスが出土しています。
ローマ帝国の滅亡そして「ローマングラス」へ
文明の終焉とともにローマ帝国時代に作られたガラス製品は、奉納品として埋められたり、文化の移り変わりや破損のために廃棄され、長い間地中に眠ることになります。
そうして地中に眠ることになったガラス製品は何千年から何百年という時間をかけ、ガラスの成分が周りの土との化学反応を起こしました。
この化学反応によりガラスの表面にキラキラとしたローマングラス特有の煌めきが生まれます。
ローマングラスの特徴は限られた環境の土に埋まることで起こり、ガラスの成分との化学反応を起こす現象を『銀化』と呼びます。
埋もれている時間が長いほど、「銀化」した層が多く積み重なることで光の反射を複雑にし、綺麗に輝くようになります。
『銀化』したガラス=『ローマングラス』
ローマングラスはガラス表面に現れる独特の光沢が特徴で、銀,金,虹色と様々な色合いの煌めきを放ちます。
この光沢は『銀化』という化学反応によるものになります。
ローマングラスは性質上割れずに発掘されることは極めて稀で、完全な状態に近いものは博物館行きになります。
基本的には発掘された破片から美しい部分を切り出したローマングラスを使用して、ジュエリーやアクセサリーへと加工します。
「ローマングラス」を加工する場合の注意点
「ローマングラス」はガラスなので宝石ほど強度はありません。
負荷をかけると欠けや割れの原因となるため、留めの作業は慎重に行う必要があります。
銀化した表面は何層にもなる薄い膜の積み重なりのため、過度の摩擦を加えると剥がれてしまうため、磨きを行う際には注意が必要になります。
ローマングラスは油脂に弱いため、手で触れた際に付く油脂にも影響を受け表面を曇らせてしまう可能性があります。
これを防ぐ方法は、ぬるま湯に中性洗剤を溶かし、軽くローマングラスを洗い乾燥させることで予防することが可能です。
その際、ローマングラスの表面を強く擦らないように気をつけましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか?
「ローマングラス」という奇跡の結晶は思ったよりも身近で簡単に手にすることができます。
しかし、人が作り出したモノを自然が煌めく結晶に仕上げた『ローマングラス』は宝石にも負けない美しい結晶です。
博物館に所蔵されるような古代の欠片を身につけるということにもロマンを感じざるをえません。
アフガニスタン人の店主が経営するお店なので勇気を持ってお店に入りましょう!
敬虔なイスラム教徒なのでお祈りの時間にはレジも売ってもらえないため時間を考慮して来店するようにしています。笑
ビーズの宝石箱:アフガンブラザーズ
太古から連綿と続く歴史の一部でもある「ローマングラス」に触れることでアクセサリーやジュエリーに興味を持っていただければ幸いです。
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