今回はモルガナイトの原石を使ったイヤーカフを作っていきます。
モルガナイトはピンクベリルとも呼ばれ、ベリル系に属するピンク色の宝石です。
宝石の原石は採集されてから研磨されていない状態のため、一つ一つの表情が異なる一点モノになります。
アクセサリーの作り方はいくつか方法がありますが、ロストワックス鋳造での製作となります。
今回もソフトワックスを使用したピアスを製作していく行程を紹介していきます。
アクセサリーの作り方の作業工程
- 素材となる宝石を観察し、デザインの方向性を決める
- ソフトワックスを使用して原型を製作、鋳造出し
- アクセサリーに仕上げていく
- 洗浄して完成
宝石を観察し、デザインの方向性を決める
今回使用するモルガナイトは原石の状態のため、様々な角度から観察しデザインに落とし込んでいきます。
モルガナイトはベリル系の宝石です。
ベリルという宝石についてはこちらの記事で紹介しています。
アクセサリーとなる原型を作り、鋳造へ
宝石からインスピレーションを受けたデザインに従い原型の製作をしていきます。
今回はソフトワックスの中でも板状の素材である「シートワックス」を使用してアクセサリーを製作しました。
大まかな作業工程
- 宝石を固定する石座の組み上げ
- ピアスポストの設置箇所を選定
- 原型完成、鋳造へ出す
原型製作に使用する素材と工具についてはこちらの記事で紹介しています。
宝石を固定する石座の組み上げ
切り分けたシートワックスを使い石座を組み上げていきます。
鋳造後に整形するため、使用するシートワックスは少し厚みのあるものを選んでいます。
ピアスのポストの設置箇所の選定
今回制作するアクセサリーはピアスになるので、耳に差し込む為の棒部分が必要になります。
耳に差し込む棒の部分をピアス「ポスト」と呼びます。
ロストワックス鋳造でピアスを作る場合はアクセサリーの土台を製作し、鋳造されたパーツに市販されているポストを溶接する方法が基本です。
原型完成、鋳造へ出す
イメージした形になれば原型の完成です。
ワイヤーワックスを使用したピアスの製作工程はこちらの記事で紹介しています。
アクセサリーに仕上げていく
鋳造から帰ってきたピアスを加工していきます。
大まかな作業工程
- 湯口取り、全体の形を整形する
- ピアスポストの溶接
- 仕上げ磨き、石留め
- 洗浄して完成
湯口を取り、全体の形を整える
鋳造されたパーツを完成した状態をイメージしつつ整形していきます。
湯口をニッパーで大まかに切り落とす。
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ヤスリで全体の形を作る。
シートワックスで製作したため、ディテールが甘いくヤスリを使い「面」と「角」を出す。
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ペーパーポイントで下磨きをする。
下磨きのペーパーポイントをかけつつ、肌に直接触れる部分の角を落とす。
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宝石が枠に入るかを確認し、調整する。
鋳造したことで収縮しているため、宝石が枠に収まらない可能性が高い。
ダイヤモンドポイントを使い内側を丁寧に削り枠を合わせる。
ピアスポストの溶接
アクセサリーの土台となる部分が仕上がったので、ピアスのポストとなるパーツを溶接します。
ピアスポストを設置するためドリルで穴を調整する。
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バーナーを使うので、火床にパーツとポストを設置する。
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フラックス(酸化防止剤)をロー付けする場所に塗る。
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銀ロウを設置する。
今回は3分ロウを使用。
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バーナーで炙り銀ロウが溶けるまで熱する。
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しっかりと銀ロウが馴染めば溶接完了。
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希硫酸に入れフラックスを溶かす。
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水洗いをしつつ重曹で酸を中和する。
石留めをして、仕上げ磨き
荒らし仕上げにすることで金属光沢が宝石よりも目立たないように仕上げていきます。
ミゼットバフ(たんぽぽ)を使用して磨き上げる。
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宝石を枠に設置しヤットコで爪を倒す。
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全体のテクスチャーが均一になるように磨く。
モルガナイトピアス完成
仕上げ磨きの作業で付いた研磨粉などを洗浄して、モルガナイトピアスの完成です。
宝石の原石は様々な形をしているため、アクセサリーに加工するには少し工夫が必要になります。
複雑な形に合わせるように加工ができるソフトワックッスは、原石を使用したアクセサリーの製作に適した素材です。
制作を終えて
今回使用した「シートワックス」は手で簡単に曲げることができるため、加工が非常に容易かつ自由度の高い素材です。
しかし、柔らかい反面指紋や浅い傷がつきやすく、鋳造後の加工に手間のかかる素材です。
原型を製作する際の素材選びは、デザインや素材の特性を考慮した上で決める必要があります。
原石は決まった形がないことも魅力ではありますが、アクセサリーにするためには手間がかかります。
柔軟な素材だからこそ形に合わせた製作が可能ですが、デザインが似通ってしまうこともあるため、オリジナリティのあるデザインを模索する必要もあります。
この記事が宝石だけでなく、製作に用いる素材の特性を踏まえたモノ作りへのきっかけになれば幸いです。
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