『緑柱石・ベリル』【宝石】超高級な輝石も実はこの鉱物

宝石編
Qlip
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どうもちょっぴり職人Qlipです。
今回は宝石というか鉱物のお話しになります。

「ベリル」と言われてもピンとくる人は多くないと思います。
これは鉱物の総称であるためであり、混入した元素によって様々な色合いに変化することで、宝石の呼び名も変わります。
希少な宝石も含むベリルという鉱物を少し深掘りしてみます。

ベリル(緑柱石)とは

  • 和名「緑柱石」、英名「Beryl(ベリル)」
  • ベリリウムを含むケイ酸塩鉱物
  • 混入した元素によって透明から半透明のガラス光沢を持つ鉱物

ベリル(Beryl)の語源は、古代ギリシャ人が「貴重な青緑色の海水石」を意味するベリロス(Beryllos)からラテン語(Beryllus)となり、古フランス語(Beryl)中世英語(Berill)と採用され、現在のベリル(Beryl)となったようです。
また、「拡大鏡」の意味にも用いられることがあったようで、『この石に手を加え凸面にも凹面にもすることができる。』という記録が残っています。
この言葉がドイツ語のメガネを意味するリブレ(Brille)に変化したと言われています。

金属元素のベリリウム(Beryllium)はベリルの鉱物の中から発見されたことが由来です。
ベリリウムは主に合金の硬化剤として利用されます。
軽金属の一種であり、航空機やミサイルに宇宙船,通信衛星などの軍事や宇宙産業の構造部材として用いられる金属元素です。

ベリル(緑柱石)の中でも状態が良く、透明度が高く発色の良いものをカットすることで、宝石として流通しています。
宝石としてはモース硬度7.5と宝石としては十分な強度を持ち、透明度のあるガラス光沢を持つ六方晶系の鉱石です。
ベリル(緑柱石)は混入される微量の元素によって様々な色合いに変化することで、宝石としての名称や価値が大きく変化する鉱物でもあります。

宝石としてのベリル

ベリル
ベリリウムを含む宝石の総称としても用いられる。
無色〜淡青〜淡緑
以下に紹介する宝石名に当てはまらないベリル系の宝石は、色名 – ベリル(グリーン・ベリル)のように呼称されます。

アクアマリン


淡青色
ベリルが2価鉄イオンを含むことで淡い青色に発色する宝石になります。
名称の通りラテン語で「海水」を意味するような透明度の高い淡青色の宝石で、3月の誕生石に選ばれています。
産出原石のほとんどは緑味を帯びていることが多く、発色の良い青色を出すために熱処理を施したものが多く流通しています

サンタマリア(サンタマリア・アフリカーナ)


美しい淡青色
アクアマリンの中でも群を抜いて美しいマリンブルーの宝石を指します。
青といえばサファイアですが、サンタマリアは発色の良い淡青色で、他に類を見ないマリンブルーの希少石になります。
ブラジルのサンタマリア鉱山にて採掘されたことが由来で、最高品質のアクアマリンとされており、希少価値が高く大きな結晶は超高額で取引されます。
サンタマリア鉱山では枯渇状態ではありますが、他の鉱山で同様の品質の鉱石が採掘されているため市場に流通しています。

エメラルド


緑〜淡緑
高価な輝石としても代表的なこの宝石もベリル系の宝石で、5月の誕生石です。
含有する元素はクロムあるいはバナジウムで、これらを含むことで美しい緑色になります。
宝石としても様々な例外を持つ数少ない宝石で、エメラルドは宝石の中でも特別加工に注意の必要な宝石として、職人は扱う際に特に緊張を強いられる宝石の代表格です。
これは内部に特有の傷が無数にあり、その痕跡が天然である証でありながら、痕跡である傷の少ないものが品質の高い良質なエメラルドになるためです。
しかしながら天然で良質なエメラルドはほぼ存在しないため、例外的に傷に樹脂やオイルを浸透させる科学的処理を施すことが認められています。
傷や化学処理が加工や洗浄など加工作業を一層困難にしているために職人泣かせの宝石です。

グリーンベリル(ミントベリル,ライムベリル)


淡緑〜黄緑
緑色のベリルといえばエメラルドですが、含まれる元素はクロムではなく2価鉄イオンと3価鉄イオンによって発色する淡緑色の宝石になります。
加熱処理をすることでアクアマリンへと変化する

ヘリオドール(イエローベリル,ゴールデンベリル)


黄緑〜黄
黄色いベリルは3価鉄イオンのみが含まれる際の発色です。
加熱処理をすることでアクアマリンに変化します
古代から人との関わりのある宝石であり、古代エジプトやギリシャでは珍重されていたようで、ギリシャ語の太陽を意味するヘリオス(Helios)と贈り物を意味するドロン(Doros)を組み合わせ、『太陽の贈り物』という意味の宝石になります。

モルガナイト(ピンクベリル)


ピンク〜淡赤紫
透明感のあるピンク色の宝石であり、ベリルにマンガンと微量のセシウムを含有しているための発色であり、他のベリル系の宝石よりも屈折率と比重が高くなります
ローズベリル,ボロビエバイトなどの別名もある。
処理をしていないものはオレンジ系の宝石ですが、熱処理をすることでピンク色の発色を強めることができます。

ペツォッタイト(ラズベリーベリル)


桃色
特徴的な桃色はマンガンイオンを含有しているための発色になります。
2003年に新鉱物として認定されるまではベリルの一種として認識されていましたが、現在はベリルと類似構造にある鉱物の変種として認定されています。
宝石質の鉱石は採掘量が少なく希少石の一種です。

レッドベリル(ビクスバイト)



鮮やかで濃い赤色のベリルであり、ベリル系の宝石の中で最も希少価値の高い宝石です。
赤いエメラルドとも呼ばれる特徴的な赤はマンガンを含有した由来の発色です。
現在採掘できる鉱山はすべて閉山しており市場に出ることも稀ですが、人工合成が成功しているため美しく傷の無いものは合成石である可能石が高いようです。

ゴシェナイト(ホワイトベリル)


無色
無色のモノは希少で、他のベリルの色合いをごく淡く帯びているものも含まれます。
無色透明なゴシェナイトは非常に希少であると同時に、ダイヤモンドに匹敵する高い屈折率も持っているため、模造ダイヤモンドとして類似品としての役割を果たしていたこともあります。

まとめ

ベリルという鉱物は微量に含まれる元素によって幅広く色鮮やかに発色し、宝石として多くの名前を持つ多様な鉱物と言えると思います。
アクアマリンなどは安価で身近な宝石でありつつも、エメラルドのような誰もが知っている高級な宝石でもあり、ほんの少しの違いで希少性が大きく変わる不思議が魅力的です。
人類との関わりも深く古代エジプトやギリシャから現代まで人々に愛される宝石なのです。

熱処理を加えられたモノも多く流通しているようですが、原石が好きな筆者としてはナチュラルの状態のベリルの美しさにも目を向けられるようになればと思います。

ベリルの多様性に触れ、宝石や鉱物と触れ合う契機になれれば幸いです。
今回は軽く宝石名に触れましたが、それぞれの宝石としても掘り下げていきます。

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