今回もガーネットという宝石についてのお話しです。
1月の誕生石でもあるガーネット。
ポピュラーな宝石ですが、驚くほど多彩な宝石の種類が存在します。
宝石の色彩が変化するのは結晶化の際に取り込まれる成分や元素が少しずつ異なるためです。
今回は数多く存在するガーネットの種類の中でも、多彩な色彩の煌きを持つ『ウグランダイト系列』の宝石に目を向けていきます。
ガーネットを構成する成分
宝石として扱われる6種類のガーネットは、それぞれに色彩と特性があります。
鉱物としてのガーネットについてはこちらの記事で紹介しているので覗いてみてください。
パイラルスパイト
ガーネットを構成する成分のうち赤系統の色彩を持つ3種類をまとめて『パイラルスパイト系列』と呼びます。
パイロープ(Pyrope)、アルマンディン(Almandine)、スペサルティン(Spessartine)それぞれの頭文字を組み合わせた名称です。
王道の赤系からオレンジやピンクなど、様々な赤系統の色彩を放つパイラルスパイト系列の宝石はこちらの記事で紹介しています。
ウグランダイト系列
ガーネットを構成する成分のうち、混入する元素によって色彩や性質が幅広く変化する3種類をまとめて『ウグランダイト系列』と呼びます。
ウバロバイト(Uvarovite)、グロッシュラー(Grossular)、アンドラダイト(Andradite)それぞれの頭文字を組み合わせた名称です。
単一の成分で結晶化する際にも構成する元素が変わることで、非常に多彩な輝きを放つガーネット族の宝石が多く属しています。
今回はこの『ウグランダイト系列』の宝石を紹介します。
色彩豊かなウグランダイト系列の宝石
ウバロバイト
緑色〜濃緑色
端成分:ウバロバイト
エメラルドのような緑色が特徴的なガーネット。
カッティングを施し宝石として使用できるような結晶は産出することはほぼなく、原石を鉱物標本として流通しているものがほとんどになると思われます。
ジュエリーに用いる場合でも原石のまま用いて加工するものになるようです。
ツァボライトガーネット(グリーンガーネット)
緑色〜濃緑色
端成分:グロッシュラー
品質の高いものはエメラルドのような深く透明な緑色の宝石。
インクルージョン(内包物)が少ないこともあり、見方によってはエメラルドに勝るとも言われ人気の高い宝石です。
非常に美しい宝石であることからティファニー&カンパニー社によってジュエリーに使用され、キャンペーンを打ち出す際に産地であるツァボ国立公園から『ツァボライト』と命名しました。
このことから人気の宝石となり、ツァボライトという名称が定着しましたが、鑑定書には「グリーン・グロッシュラーガーネット」と記載されます。
ミントガーネット(ライムガーネット,ミントグリーンガーネット)
薄い緑色〜黄緑色、黄色
端成分:グロッシュラー
ツァボライトのような濃い緑色には含まれないパステルグリーン系の宝石を呼称します。
ミントガーネットの中には蛍光性のあるモノもあり、紫外線(ブラックライトなど)を当てることで蛍光ピンクや蛍光オレンジに発色するモノも存在します。
「UVタイプ」と表記されているものは蛍光性が見られる稀少なミントガーネットになります。
メレラニ・ミントガーネット
薄い緑色〜黄緑色
端成分:グロッシュラー
タンザニアのメレラニ丘陵から採掘されるミントガーネットは品質が高く、『メレラニ・ミントガーネット』と呼び非常に稀少な宝石とされています。
ヘソナイト(オレンジガーネット)
黄色〜オレンジ〜赤褐色
端成分:グロッシュラー
独特なインクルージョン(内包物)が特徴で、糖蜜条組織(トリークル)と呼ばれるハチミツのようなとろみを感じさせる不均一な組織を内包します。
高品質とされるヘソナイトには透明度が高いため独特なインクルージョンを感じることが難しくなりますが、他の宝石にはないとろみを感じる色合いが独特な魅力を持つ法施子です。
透明度の低いモノでも特有のインクルージョンが強く感じられるモノは稀少で高価で取引されます。
リューコガーネット(ホワイトガーネット)
無色透明
端成分:グロッシュラー
グロッシュラーガーネットの中でも非常に稀少な宝石で、無色透明なガーネットのみを『リューコガーネット』と呼称します。
宝石質の結晶が産出することがなく、限られた地域のみであるため大変稀少なガーネットです。
さらに蛍光性を持つ結晶も存在し、蛍光色が桃色〜赤紫色に発色する稀少な個体も存在する。
完全に無色透明なものは稀であり、わずかながらに緑系や黄色系の色味を帯びています。
マリガーネット
緑色、黄色、茶色
固溶体:グロッシュラー + アンドラダイト
グロッシュラーとアンドラダイトの成分の比率によって色味が決まり、前者の成分が多いと緑系に発色し、後者の成分が多くなることで赤茶色に発色します。
また、バイカラー(2色)やパーティーカラー(2色以上)の混在した色合いの稀少な結晶も存在します。
非常に稀なモノでは、変色効果(カラーチェンジ)を持つ個体も存在しますが、あまり色合いはすぐれないようです。
マリ共和国とその周辺でのみ産出されることから産出国名にちなんで『マリガーネット』と呼ばれるようになりました。
レインボーガーネット
赤褐色〜暗褐色
固溶体:アンドラダイト + グロッシュラー
結晶自体は褐色なのですが、結晶内部の組成はアンドラダイトに近い層とグロッシュラーに近い層が交互に積み重なっています
この時に特定の条件を満たす組成である場合に、『イリデッセンス(虹のような七色の輝き)』という光の干渉現象効果を結晶表面に発生させ、宝石表面に七色の閃光が現れます。
デマントイドガーネット
緑色〜濃緑色
端成分:アンドラダイト
ガーネット族の中でも最も価値のある宝石と称される宝石がデマントイドガーネットです。
鮮やかな濃緑色でありながらダイヤモンドのような輝きを持つ宝石であり、ガーネットの王様とも呼ばれる美しく稀少な宝石になります。
特有のインクルージョン(内包物)を持ち、『ホーステール』と呼ばれる他の宝石では確認できない針状のインクルージョンを内包することがあります。
結晶の中心部から放射状やフラッシュ状に広がるこのインクルージョンが確認されると、宝石としての価値がより高まる。
トパゾライト
黄色〜オレンジ色
端成分:アンドラダイト
「トパーズのような」という意味が由来となるガーネットですが、ダイヤモンドと間違われるほどの輝きを持つ宝石です。
ガーネット族の中でも稀少な宝石。
メラナイト
黒色
端成分:アンドラダイト
黒い光沢を持つ宝石は少なく色味としても稀少な宝石。
アンドラダイトの中でもチタンんを多く含むことによって黒い発色になる。
宝石としてはあまり一般的に流通していないようです。
まとめ
ガーネットの話だけで3記事にもなってしましました。
宝石としてのガーネットの奥深さにただただ圧倒されるばかりです。
色彩の濃淡などで様々な呼ばれ方をするので、さらに多くの名称を持ったガーネットが存在しそうな気がしてきますね。
中には名称にガーネットが含まれないものもあり、判別が難しいのは困ったものです。
個性的なこれらの宝石を手にできることを楽しみにしていこうと思います。
色鮮やかで個性豊かなガーネットという宝石に少しでも興味を持ってもらえれば幸いです。
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